スケルトン、という言葉をよく耳にしますが、 室内の壁やら床やら天井やらなにやら、すっかり取り払い、 コンクリートの箱にしてしまって、新しく作っていくやり方を そのように呼んでいます。
躯体のコンクリートを残して、右の写真のように大胆に解体していきます。
マンションの室内の壁は、撤去しても構造的に影響のない木造の壁がほとんどです。
※まれに、それほど高層で無いマンションにおいて、 室内の仕切りのコンクリートの壁を構造体にしている壁式構造の物件があり、 その場合はコンクリートの壁は撤去できません
「自分らしい住まい」を求めてリフォームされるお客様は、間取りの大規模な変更を希望される場合が多いです。一度、まっさらにしてしまって、新しい間仕切りを作っていったり、広いワンルームにする、なんていうのも素敵ですね。
お客様が スケルトンリフォーム をする大きな理由の一つは、生活のスタイルが現状の建物とかけ離れていているためです。
築20年ほどのマンションで平均的な間取りは、入ってすぐに両側に5~6畳の洋間がありまっすぐ廊下が伸びてリビングになり和室が併設されているという形が一般的です。
しかし、そういった間取りは、現代のライフスタイルとは合わなくなってきているようです。
最近は、都内の手ごろになったマンションを改造したり、きちんと手入れのされた中古住宅を買い求めるようになり、自分たちの生活スタイルにあわせてリフォームする方が増えています。
ライフスタイルに合わせて、住まいを自由にカスタマイズできるのが、スケルトンリフォームの大きな魅力ですね。
工事の現場責任者を勤めさせていただいております。
長年の経験から、建築士の目から見た、マンションをスケルトンリフォームにするメリットにつきまして解説いたします。
スケルトンリフォームは時間も費用も通常のリフォームよりも多くかかってしまいますが、表から見える箇所だけではなく、見えない箇所もしっかり工事できますので、長くお住まいになる事をご希望であれば、おすすめしたいリフォームです。
スケルトンリフォーム は、工事前にすっかり解体してしまうため、そのマンションの「現状を知る」ことができます。
以前、私供では大変歴史のあるマンションのリフォームをさせていただいたことがございました。
今から40~50年前のマンションです。その当時はマンションなどという名前もなくアルミサッシなどはフランスから船便で輸入したそうです。
たっぷりとした造りのお住まいでしたが、困ったことに図面などがはっきりとせず、また、既にリフォームを繰り返していたので、どこがどうなっているのか全然わからなかったのです。
建設当時、最新の技術を駆使したスチーム暖房設備や、排気ルートなどを理解するのも困難でした。
そこで、こちらのマンションのリフォームではスケルトンリフォームにして、配線や配管の設備をリニューアルすることに努めました。
スケルトンにして構造がわかったので、音がどのくらい下の階に響くかということも予測できました。
※その為、階下の方へ多大な配慮も行いながらのリフォーム工事となりました
どの程度のマンションか、というのは、スケルトン にしてみると良くわかるのです。
マンションの法定耐用年数(固定資産評価や税制上の減価償却年数)は財務省では1999年に47年としています。なお、レンガ造・石造・ブロック造は38年、木造においては27年です。
しかし、この法定耐用年数は税制上の償却年数であり、実際には鉄筋コンクリートの設計耐用年数は60~70年を基準としているようです。
この耐用年数の長さにより、20年前の物件でもスケルトンにすることにより、今と同じか、今よりもグレードを上げることができます。
マンションは、窓枠ひとつとっても、悲しいことにラミネート樹脂で造られています。ましてやドアや床など色合いこそ最新ですが、自然素材や無垢など皆無と言っていいでしょう。
何年か経てばその違いは歴然とします。偽物は偽物なのです。
私たちが スケルトンリフォーム をお勧めする理由はそこにあります。
自分たちの生活に合わせて間取りを変化させ、新築のマンションでは絶対使えない無垢の床や無垢の窓枠、ドア枠、そして自然素材の壁や天井などを見えない部分にしっかりと手を入れて「自分たちの耐用年数」を延ばすのです。
築20年超の古いマンションの供給は、所有者の買い替えにより年々増えています。
今後、中古マンションの買い替え需要は、どんどん増えていくものと思われます。
色々なリフォームがあると思いますが、この耐用年数ということも頭の隅におかれてリフォームなさることも一つの方法です。
スケルトンリフォーム をすると、「見えない部分」もしっかり施工することができます。
たとえば専有部分内の設備配管であり、配線、排気設備などです。そして、断熱や防音などの居住空間に大きく影響してくる部分です。
マンションは、みんなのものである玄関、エレベーターや廊下、屋上、外観そして配管、配線など様々な部分で共有しなければなりません。
しかし、一歩自分の部屋に入ってしまえばその中において維持管理しなければならないのは自己責任であり、自分の裁量でいくらでも耐用年数を延ばすことができます。
※ただし、外に面した部分である開口部や自分の区画の中に入っている配管、配線などのダクトスペースやパイプシャフト、パイプスペースなどは管理規約により多少の差異がありますが共有部分です。
スケルトン にした後には、新築と同様な状態、つまり何にもない状態になります。共有部分との絡みがあるものの、見えない部分が露わになるのです。
この見えない部分をしっかりと現在の方法で蘇らせます。
たとえば、配管であれば現在の主流である樹脂のさや管ヘッダー方式にすることもできますし、油でこびりついた排気ダクトも交換できます。
そして、配線なども新しくすることができます。情報配線は現在と同じレベルにすることが可能です。今や、一般家庭でもLAN配線は当たり前になっていますね。
※ただし、マンションの電気容量は例外となりますのでご注意ください。マンションによって各専有部分に振り分けられる容量が定められているため、すべての中古マンションが現在と同じくオール電化にしたりすることはできません。
そして、断熱です。
マンションなのに断熱?といわれそうですが、意外と外壁に面した部分に断熱がおこなわれておらず、結露の原因となり得る場合が多いのです。
更に、階下や階上の方との接点でもある防音です。
生活音は身内ならば我慢もしようがありますが、他人の生活音はストレスとなりますし、同じく階下や階上、隣家にも影響していきます。
ここは、しっかりと防音、遮音したいところです。
このように、見えない部分をきちんと施工することも スケルトン にする理由でもあります。